「ポートテン、スローアヘッド」(取り舵10度、微速前進)−。鳥取県の境港で二十一年間にわたって大型船のパイロット(水先案内人)を務めた境港市中野町の前川勝さん(73)の引退セレモニーが三十一日、同市昭和町の外港昭和南一号埠頭で行われた。
パイロットは、貨物船や大型客船が入出港する際、船長に代わって航行の指揮を執る港湾には欠かせない業務。海外航路の貿易船の船長をしていた前川さんは、八六年に境港のパイロットとなり、以来二十一年半にわたり延べ四千五百隻の大型船を動かしてきた。
この日は最後の仕事を前に岸壁で引退セレモニーが行われ、妻の和代さんとともに、港湾関係者から花束を受け取った。前川さんはあいさつの中で、二〇〇二年の江島大橋建設工事で巨大クレーン船を動かし、中海の工事現場に運んだことを一番の思い出に挙げた。クレーン船は百メートルを超す高さがあり、高さ四十メートルの境水道大橋をくぐるのに大変苦労したという。
前川さんはセレモニーのあと、香港船籍の貨物船「SAGA HORIZON号」に乗り込み、高さ三十二メートルの船橋ウイングから出航の指揮を執った。貨物船は午前十一時、前川さんの指揮の下、ゆっくりと巨体を動かし、岸壁を離れていった。
同僚の坂口恒久・境水先区水先人会会長は「前川さんは慎重かつ大胆な人。その気力で事故なくけがなく、この日を迎えられたのでしょう」とはなむけの言葉を贈った。 (11/1記事)
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