終戦間近の一九四五年四月二十三日に鳥取県境港市大正町の岸壁で発生した旧日本海軍の徴用船「玉栄丸」の爆発事故で、爆発原因が上等兵のたばこの投げ捨てだったことを証言した憲兵(故人)の手記が明らかになった三十一日、当時を記憶する市民らは複雑な心境をのぞかせた。犠牲者の遺族は証言内容に疑問を抱きつつもやり切れない思い。一方、陸揚げ作業部隊に自宅の部屋を提供していたという市民は「憲兵と同様の証言を聞いたことがある」と打ち明けた。
「本当かな。上等兵ならば爆薬を積んでいることを知っていたと思う。そこでたばこを吸うのは非常識だ」。爆発現場近くの荷役会社に勤務していた父親を亡くした市内の男性(80)は憲兵の証言に首をかしげる一方、「このためにおやじが死んだと思うと残念だ。情けない」とも語った。
当時、境港に駐留していた陸軍船舶輸送部隊「暁(あかつき)部隊」の隊長代理が自宅を間借りしていたという市内の男性(75)は終戦後、隊長代理の部下から「兵隊が『隠れたばこ』をして吸い殻を投げてしまい、爆発を引き起こした」との話を聞いたことがあると本紙に説明。「犠牲者のことを考えれば吹聴したくない」と男性はこれまで公言しなかったが、憲兵の手記が明らかになったのを機に打ち明けたという。
爆発はなぜ起き、明らかになった憲兵の手記をどう受け止めるべきか。『鳥取県の戦災記録』の発行に携わった境港市の根平雄一郎教育長は憲兵の「重要な証言」と受け止めながら、「危険な火薬を沖ではなく、接岸して荷役したという軍のミスもあり、部隊は火薬と知らされずに作業をさせられた。今で言えば、軍の大きな責任問題だ」と指摘。中村勝治市長は「手記があったことはあらためて戦争の悲惨さや平和の尊さを考える大切な機会になる」と話した。(6/1記事)
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