「改正船舶油濁損害賠償保障法」が施行された一日、境港でも国交省が接岸中の北朝鮮、ロシア船に立ち入り検査を実施し、岸壁には前日とは異なる雰囲気が漂った。地元水産加工業界が原料として依存してきた北朝鮮、ロシア船による輸入ベニズワイガニの激減は必至だが「抜本的手だてはない」(中村勝治境港市長)のが現状。当面は、押し寄せる影響を凝視することになる。
同省によると、立ち入り検査は北朝鮮船九隻、ロシア船二隻の計十一隻が対象。鳥取運輸支局の外国船舶監督官四人が二班に分かれ、法規制の対象となる一日入港の船かどうかを調べる一方、法の趣旨を記載したハングルやロシア語などのパンフレットを配った。全船が施行日前の入港で違法はなかった。
鳥取運輸支局は今後も立ち入り検査を継続するが、国が保険証明書を交付した北朝鮮船は十六隻(二月二十五日付)しかなく、今後の入港数は不透明な情勢だ。
中村市長は一日、「(水産加工業は)市民の多くが携わっており、雇用に与える影響も心配」との談話を発表。対策については「抜本的な手だてはない。今はただ、推移を見守りたい」と苦しい胸の内を吐露した。
境港市内の水産加工業界は、資源枯渇に伴う境漁港の水揚げ量減少に伴って、輸入依存度を高めてきた。法施行を機に安価な原料確保が困難となるが、県境港水産事務所によると、この日の漁港の競り値に高騰はなく、通常の範囲内だった。
競り値について境港水産振興協会の米村健治専務は「(原料を)高値で多く買っても採算に合うかどうか不明。『入らないから高く買う』という単純なものではない。加工業者の冷静な対応の表れでは」と話す。
今後はどうなるのか。この日の境水産高校(境港市中野町)卒業式で、同振興協会の和田卓一郎会長は文書で卒業生に対し「漁獲減少の中での資源管理の徹底、安心安全な水産物の供給などが求められ、かつての成功体験は通用しなくなった」と説いた上で、「今は厳しくても、食糧供給の一翼を担う水産業が尊重され、脚光を浴びる時が来る」とのメッセージを寄せている。 (3/2記事)
|